インプラントとは
虫歯や歯周病、外傷などが原因で歯を失ってしまった場合、または生まれつき永久歯がない場合などに、歯根の代わりとして顎の骨に埋め込むチタン製の人工歯根のことを「インプラント」といいます。
インプラント治療は、顎の骨に埋め込んだインプラントに人工の歯冠を被せることで、天然の歯に近い機能と見た目を回復させることができます。
他の治療とは異なり、歯肉との隙間もなくしっかりと噛めるため、インプラント治療を選択される患者様が増えています。
インプラントの歴史
現在のインプラント治療の基礎となっているのは、1952年にスウェーデンのペル・イングヴァール・ブローネマルク博士が純チタンと骨が結合することを発見したことです。
ブローネマルク博士はこの現象を「オッセオインテグレーション」と定義し、綿密な研究と基礎実験を重ねて、1965年に初めて人間において、人工歯根としての臨床応用を開始しました。
その後15年にわたって臨床研究を続けてデータを蓄積し、1981年に学術論文を発表したところ、歯学界にセンセーションを巻き起こし、世界中で「オッセオインテグレーション・インプラント(骨結合型のインプラント)」が臨床の場で実際に行なわれるようになったのです。
日本における骨結合型のインプラント治療の応用は、20年以上前に始まりました。
これまでに行なわれたインプラント治療の経過も良好であることから、現在では、歯科治療の一分野として確立され、患者様の認知度も高くなっています。
他の治療との違い
入れ歯
【部分入れ歯】
失った歯の代わりとなる義歯(入れ歯)を、周囲の歯にバネで引っ掛けることで固定し、歯の機能を補います。
【総入れ歯】
歯全体を再現した義歯(入れ歯)をお口の粘膜や歯肉に密着させることで固定し、歯の機能を補います。
メリット
- インプラントやブリッジ治療と比較すると、治療期間が短い
- 患者様自身で取り外すことができるため、簡単に清掃ができ、清潔に保ちやすい
デメリット
- インプラントやブリッジ治療と比較すると、見た目が劣る
- 安定感があまりなく、粘着性のある物や硬い物が食べにくい
- 部分入れ歯の場合、バネを掛ける歯への負担大きく、歯の寿命を縮める
ブリッジ
失った歯の両隣の歯を削り、それらを支台にして失った歯の代わりとなる人工歯と両隣の歯に被せる歯冠とを連結させた被せ物を、橋を渡すように被せることで、歯の機能を補います。
メリット
- 人工歯の素材を良質のものを選べば、天然歯に近い見た目にできる
- 硬い物でも、不安なく噛める
- 入れ歯よりも天然歯に近い感覚で食事ができる
デメリット
- 両隣の歯を削る必要がある
- 失った歯が多い場合は治療できない
- 支台となる両隣の歯への負担が大きく、歯の寿命を縮める
インプラント
歯肉を切開してチタン製のインプラントを顎の骨に埋め込み、骨と結合したら人工歯を装着させることで、歯の機能を補います。
メリット
- 患者様ご自身の歯と同じように噛むことができ、見た目も自然である
- 噛む力が低下せず、味覚や食感も天然の歯と比較してもほとんど変わらない
- 周りの健康な歯に負担をかけることがない
- 食べ物が詰まることが少なく、清潔に保ちやすい
- 噛むときに適度な刺激が顎の骨に加わるため、顎の骨が痩せにくい
デメリット
- 治療期間が他の治療と比較して長い
- お口の状態や全身疾患(重度の糖尿病など)によっては治療できない場合がある
- 健康保険が適用されない
治療の流れ(1回法・2回法)
カウンセリング
まずはお口の状態を診察し、歯を失ってしまった原因を確認します。それから、カウンセリングにて患者様のお悩みやご要望についてじっくりとお話しを伺います。
また、持病などの全身状態や服用しているお薬などについても確認させていただきます。また、歯を失った原因が虫歯や歯周病の場合は、ホームケアの重要性についてご説明をさせていただきます。
検査・診断
レントゲンやCTスキャン撮影、噛み合わせ検査など、患者様の口腔内を精密に検査します。
十分に検査を行なうことは、リスクを回避し、安全で適切な治療を提供するために非常に重要です。
この検査の結果をもとに、歯科医師が中心となって、上部構造を担当する歯科技工士と予防とメンテナンスを担当する歯科衛生士がチームとなり診断を行ないます。
そして、選択できる治療方法とその治療期間、費用やメリット・デメリットなどを患者様に丁寧にご説明し、必ず同意をいただいてから治療を進めていきます。
2回法
Step1 一次手術
局所麻酔をし、歯を失った部位の歯肉を切開します。
顎骨に穴をあけたらインプラントを埋め込み、インプラントのヘッド部分を保護するパーツを取り付けて、インプラントを完全に覆った状態で歯肉を縫合します。
仮歯を装着します。
1回法
Step1 一次手術
局所麻酔をし、歯を失った部位の歯肉を切開します。
顎骨に穴をあけたらインプラントを埋め込み、インプラントのヘッド部分にキャップの役割をするパーツを取り付けて、それが歯肉の上に露出した状態で歯肉を縫合します。
場合によってはすぐに仮歯を装着します。
Step2 治癒期間
インプラントと周囲の顎骨が結合して、充分に固定するまで数ヶ月間待ちます。これを治癒期間といいます。治癒期間は治療部位や患者様の骨質により異なります。
Step3 二次手術
顎の骨とインプラントが十分に結合したら、2回目の歯肉の切開を行ない、インプラントのヘッド部分に取り付けていた保護パーツを外し、人工歯との接続部品(アバットメント)を連結します。
人工歯装着
口腔内の型を採って人工歯を作製します。そして、インプラントに連結させたアバットメントに人工歯を装着します。
1回法の場合は、インプラントのヘッド部分に取り付けていたキャップをアバットメントに取り替えてから、人工歯を装着します。
メンテナンス
インプラントを支えている歯肉や顎骨も、ケアを怠ると歯周病にかかってしまう可能性があります。インプラントの周囲の組織が歯周病にかかると、インプラントがぐらついたり抜け落ちてしまうことがあります。
インプラントを長く使い続けるためには、毎日の歯磨きに加えて定期的に当院でメンテナンスを受けていただくことが大切です。
1回法と2回法の違い
1回法と2回法の違いは、歯肉を切開する回数です。
2回法では、インプラントを埋め込んだ後に一旦歯肉を縫合し、骨とインプラントが結合した後に再度歯肉を切開して人工歯を取り付けるためのアバットメントを取り付けます。
一度しっかりと歯肉をとじるので治療中の感染のリスクが低く、歯肉などの粘膜の調整がしやすいため、当院ではほとんどの場合において2回法を採用しています。